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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(さ)5号 判決

主文

原判決中法令の適用において少年法第五一条後段を適用して被告人を懲役一三年以上一五年以下に処すべきものとした部分を破棄する。

理由

検事総長佐藤藤佐の非常上告申立の理由について。

記録を調べてみると、原裁判所である大阪高等裁判所第一刑事部は、京都地方裁判所第二刑事部が昭和二五年一一月八日有罪判決を言渡した本件被告人に対する強盗殺人放火被告事件の控訴審として、昭和二六年七月一三日右第一審判決を破棄し、右第一審判決中放火の点は無罪とし、同判決が確定した同判決判示第二の、被告人が満一八歳に満たない当時である。昭和二四年一二月一四日犯した強盗殺人の事実に対し、法令の適用として、「被告人の右行為は刑法第二四〇条後段に該当するから所定刑中無期懲役刑を選択し、なお被告人は本件犯行当時一八歳に満たない少年であったから、少年法第五一条後段により被告人を懲役一三年以上一五年以下に処す」と判示し、被告人に対し不定期刑を宣告し、右判決はその後上告申立期日の徒過により、同月二八日確定したものであることは所論のとおりである。しかし、少年法第五一条後段の規定に「罪を犯すとき一八歳に満たない者に対しては、無期刑をもって処断すべきときは、一〇年以上一五年以下において、懲役又は禁錮を科する」とあるのは、一〇年以上一五年以下の範囲内において懲役又は禁錮の定期刑を科するとの謂いであって、一〇年以上一五年以下の範囲内において不定期刑を科する意味ではない。しからば、原判決がその理由の中で、少年法第五一条後段により「被告人を懲役十三年以上十五年以下に処すべく」と判示して、不定期刑を言渡した部分は、少年法第五一条後段の解釈適用を誤った違法があり、本件非常上告はその理由があるものと認める。

よって、刑訴第四五八条第一号本文によって原判決中右法令違反の部分を破棄すべく、尚、同条第一号但書に「原判決が被告人のために不利益であるとき」とは、事件につき更に為さるべき判決が原判決により利益なことが法律上明白である場合をいうものと解すべきであるが、本件につき更になさるべき判決が原判決より利益なことが法律上明白であるとはいい得ないので、主文のとおり判決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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